村岡ケンイチ(アーティスト/医療施設空間プロデューサー/似顔絵セラピー 代表)
1)名古屋芸術大学にお声がけいただいた理由
名古屋芸術大学は私の母校です。在学中には津田先生にも卒業制作をはじめ様々な制作で大変お世話になりました。
卒業後は「似顔絵セラピー」という活動を通して、医療とアート・デザインの新たな関係を模索してきました。
17年間の活動を通じ、徐々に医療という世界の中にアートが受け入れられ始めているように感じています。
昨年より「医療とアートの学校」というブースを持たせていただいている日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が、今年度は愛知県で開催されることが決まりました。今年は特に3つの注目イベントの一つとして「医療とアートの学校」を担当することになり、母校のある名古屋・愛知県での開催という事で、名古屋芸術大学の川村理事長・津田副学長にお声がけさせていただきました。
名古屋芸術大学2年在学時に始めた似顔絵がこのような形のご縁となり、嬉しく思います。
2)「アートのくすりやさん」についての印象、感想
今年の2月に開催された名古屋芸術大学の卒業制作展を観させていただいたとき、医療の現場に求められている作品だなと感じました。
「医療とアートの学校」会場の中でも駒井先生のブース設計は素敵で、学生さんが医療関係者や来場者に丁寧に説明している姿が印象的でした。
医療の世界に求められている「社会的処方」というキーワードがぴったりなブースでした。
芸術系の大学がここまで医療の世界に踏み込んで、学生・教員ともに医療を考え発表されたステージは今まで、なかったのではないでしょうか。
美術大学にとっても大きなチャレンジだったと思います。
学会は、新しい発想に出会う場でもあります。
「アートのくすりやさん」という場を通して、皆さんが集い、考え、発信する拠点としてこれからもぜひ活動を続けていただけたら嬉しく思います。
■ニュース
医療とアートの学校
日本プライマリ・ケア連合学会
学術大会2023年紹介ページ
https://preview.studio.site/
■医療とアートの学校
【社会的処方】や地域とのつながりを
実践できる新たな医療空間の提案。
https://note.com/lively_
■似顔絵セラピー・ホームページ
http://www.nigaoe-therapy.jp
■日本テレビ・似顔絵セラピー番組
https://youtu.be/tl_Maz5c1dY
津田佳紀(ブース責任者/リベラルアーツコース、先端メディア表現コース教授)
1)プライマリケア学会への参加を決めた理由(村岡さんからのお話を受けた理由)
芸術教養は、社会の中でアートが役にたてる場面をプランニングしたり、その為の基礎的な調査をしたりする領域です。今回、名古屋芸大の卒業生である村岡ケンイチさんが、似顔絵というかたちで、アートが医療機関で患者さんやそこで働くお医者さん、看護師さんを助ける活動に取り組まれていることを知り、これは広く社会に役立つ分野だと感じて参加を決めました。万人にとって健康や老後といった問題は存在することから、芸術教養が標榜する上記の枠組みに非常に合っていると思います。また、村岡さんをはじめ、今回出品して頂いた本学出身のクリエーターと、彼らと社会を結びつける芸術教養の学生諸君がコラボできる切欠としても期待しました。
2)ブースのテーマを「アートのくすりやさん」にした理由
名古屋芸大としても、プライマリケアという分野に取り組む初めての試みだったこともあり、まずは誰が見ても分かりやすい状況を想像した時、「くすりやさん」のイメージが出てきました。最初はなんとなくやっていましたが、アートとして発信できるメディア(media)としての機能が 身体や精神の状態を改善する薬(medicine)の機能と類似している(※1)と感じてからは、この選択が良かったと思いました。
3)ブースのイメージを「昭和」にした理由、どこからそのイメージが湧いたのか
北名古屋市の回想法などで、お年寄りの記憶の中に出てくる薬局は、現代のドラッグストアではなく昭和の古びた薬局だと思います。もちろん私たちのブースは、老若男女どなたでも来ていただきたい場所ですが、特にこの辺りに焦点を合わせた企画になっていたかもしれません。若い世代の人にとっても、宮沢賢治の世界にあるような時代を感じさせるファンタジーとして、昔のくすりやさんのイメージを受けとめてもらえるかも知れません。
4)わたしたち芸術教養領域の学生たちの動きや取り組み方について、どう思われましたか
短い期間にも関わらず、この企画の意義や方向性をよく理解して参加してくれたと感じています。ブースの立て込みから、来場者への解説、会場の維持など、よく頑張ったと思います。特に2日目のプレゼンテーションは、よく準備されていて良かったと思います。今後は、このような機会を通して、学生ひとりひとりが、社会の中で活動する人々とリンクできるよう、触手を拡げて下さい。
(※1「ER 緊急救命室」のシナリオライターでもあるニール・ベアさんが、ディレクターをやっているハーヴァード メディカル スクールの「media and medicine」という認定プログラムがあります。「media」と「medicine」が絡んで、このようなかたちで学校のカリキュラムになっていることも、芸術教養がプライマリケア学会に参加することと符合しますね。https://ghsm.hms.harvard.edu/education/media-and-medicine )
駒井貞治(スペースデザインコース教授)
1)プライマリケア学会への参加を決めた理由(村岡さんからのお話を受けた理由)
これまで色んなイベントをデザイン領域として行ってきました。今回のお話はこれまであまり関わったことのない分野からのお話でしたが、きっとアートやデザインにできることがあるのでは、と思い興味が湧きました。芸術教養領域とのコラボレーションも、そういえばこれまでほとんどしてこなかったので、その点でも面白そうだと感じ、参加することにしました。
2)ブースのテーマを「アートのくすりやさん」にした理由
自分がずっと携わってきた建築関係の仕事でも、デザイン領域の提案でも、「物語」は欠かせません。単にアート作品を展示するのではなく、そのブース創りのデザインプロセスに「物語(=設定)」が必要です。自分がいつもデザインの学生に示し、芸術教養領域の授業でもお話しした『じつは、わたくしこういうものです』のように。今回、アート作品や、名芸の色んなコースや取り組みが、じわじわ効いてくる漢方薬のように処方される、という「物語」があれば、生き生きしたブースになる、と考えました。
3)ブースのイメージを「昭和」にした理由、どこからそのイメージが湧いたのか
高度経済成長期の昭和30~40年代の懐かしい感じの、困った時には駆けこめるような街の薬屋さんなら、高齢者も子どもたちも安心して訪れやすい空間になるんじゃないかと思いました。「ポートメッセなごや」の会場は、とっても広くて、新しい感じなので、その対照にもなるかな、とも。木製の古い感じの薬棚に色んな作品やそれぞれの領域のコースでの取り組みを詰め込む、裸電球あるカウンター、じっくり話を聞くソファーやテーブル、50年前にでき、アートやデザインを少しずつ地域に根付かせてきた名芸、それらのイメージからこの発想が生まれました。
4)わたしたち芸術教養領域の学生たちの動きや取り組み方について、どう思われましたか
僕の担当のスペースデザインのコースの人たちより、展示の搬入や搬出は、もちろん慣れていないけど、コンセプトを説明している時の食いつきや、それぞれが工夫しながら楽しそうに棚にセッティングしている時の様子などから自分が考え設計して制作した棚とカウンターを十分理解して、魅了されていた感じもあって、嬉しかった。イベントの開催時間帯は忙しくて来られなかったけど、搬出時の満足げな様子からも、頑張って説明してくれていたんだなと伝わってきました。今後もそれぞれの領域の得意分野を活かし合えるような取り組みができればと思います。
内山あい
作品が社会に与える影響を最前線で見ることができ、とても良い経験になりました。
神谷 元
今まで知らなかった分野を見たり体験できたりしたので新鮮な経験をすることができた。
鈴木美砂
右も左も分からない中でしたが、先生の力も交えつつなんとかやり遂げられてホッとしています。
春田紗英
会場が遊園地のように楽しい空間だったので、少しでも作り手として関われたことが嬉しかったです。
李卓
プロジェクトの開始から搬入まで短い期間でしたが、同じ班の人と協力して良いものを作ることができたと思います。
片岡祐介
最後まで「これで良いのか?」と思っていたけど、振り返ると「あれで良いのか」という気がしてくる。
腰本彩葉
初めてアートと社会を繋げる体験ができ、社会経験としてスキルを上げることができたと思います。
梛野真朋里
普段学んでいることが社会とこんな形で繋がることができるとしれて、ワクワクしました。
三浦あづさ
実社会に対しての緊張感も含め、刺激と充実感に溢れていて、楽しかった。
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