作品一覧


あなたのために(他、動画3本)

 霍然 カクゼン

 

親子の問題や摂食障害という、現代社会のセンシティブなテーマを、高度なスキルでアニメーション作品という形で、印象的に描き出している。短いアニメーション作品だが、心に刺さる人は少なくないと思われる。親子関係や自分の問題に悩みながらも、そのことを自覚できていない人が観れば、自分の悩みの原因に気づけるのではないか。そのような繊細さと鋭さを秘めた作品群である。



湖畔の徒(左) 平原の徒(右)

南谷有紀 ナンヤユウキ

 

南谷の作品群は、芸術作品は不安を呼び覚ますと同時に、healing(癒し)の力も併せ持つ、と教えてくれる。ここに展示した立体以外にも、作家は「沈むものへの予感」などの平面作品も多数制作してきた。それらは、今回の立体作品とともに、不安を客観視させるとともに、安らぎをもたらし、アートの素晴らしさを伝えてくれる秀作である。

 

ギャラリーのアーティストページ 



いろいろいもむし

小笠原希 オガサワラノゾミ

 

巨大でカラフルな芋虫があちこちに這う姿は非日常的で、どこか可愛らしい。「小さな生き物が大きくなったら、世界はどんな風に見えるのだろう。」作家である小笠原のそんな疑問から生まれた作品だという。考え抜かれた柔らかい素材とフォルムを見て、触れるだけで気持ちがほんわり、ほっこりする。



私を辿る時間

東風花 アズマフウカ

 

昔の物品を前にして思い出を共有するという従来の回想法の考え方をベースに、回想法の先進地である北名古屋市で、参加者がアートを通してコミュニケーションを楽しみ、自らの記憶を整理するなかで、未来思考になれることを目的としたワークショップを作家の東は実施した。高齢化が進む社会では特に意義深い試みだ。その成果物を含めた展示の一部を、今回は供覧に付す。



U.COLOR

増田千紘 マスダチヒロ

 

この作品は色覚少数者のためのユニバーサルデザインとしてつくられた。色を図形に置き換えて表現することで認識を共有しようと試みるツールである。色覚少数者の「色覚」には様々なタイプがある。最も多いのが、赤から黄、緑にかけての見分けが難しい人たちで、日本では男の人の5%ほどで、かなり高い割合である。多様性が重視される社会の実現に重要な示唆を与える作品である。



メメント・モノ

滝沢陽菜 タキザワハルナ

 

モノを見て、誰かを思い出す。日用品が”記憶の再生装置”としての役割を持つと作者の滝沢は考える。それはたとえ、大量生産された日用品であったとしても、その集合体は一個人を表現する何かだ。滝沢は、周囲の人との関係性が断たれたとしても、他者がモノと紐づけた記憶の中に自分の存在が残り続けると考えている。我々の日常を支えるモノたちは何だろう、と振り返りたくなる作品だ。



Day to Day

日垣亜衣 ヒガキアイ

 

作家の両親の昔の写真のなかから選んだ十枚を三色に分解したイラストレーションをリソグラフにした一群の作品。ここではそのうちの一枚を展示している。過去を懐かしむ行為に焦点を当て、鑑賞者が温かな気持ちになるよう制作したという。一つ一つの作品が鑑賞者の過去にも語りかけてくるようである。我々も親や祖父母などの古い写真を探し、若かりし頃の話を聞きたくなる。



Odd Cats

鈴木朱音 スズキアカネ

 

「人がイメージする奇妙な猫たち」というテーマで制作されたというゲーム作品。作家の鈴木によると、このゲームの登場人物や猫は、それぞれ国内外の童話や伝承、ことわざなどからインスピレーションを受けて描かれたという。さらに、プレイヤーはゲームを進めていくことで、それぞれの題材になった話も読むことができる。この作品は、様々な事情で学校に行けない子どもたちに、ゲームを通して学ぶきっかけをつくることも期待される。

 

「ふりーむ!」にて、ゲーム公開中

 



命のファンファーレ

齋藤勇介 サイトウユウスケ

 

生きることは、外部の影響により変化していくことだと齋藤は語る。最初に展示された名古屋芸術大学の卒業制作展のとき、晩冬の十日間にもわたる期間中、作家は連日、作品が設置された屋外に待機し、薪をくべて、火を焚く行為を続けていた。そのことで、我々鑑賞者は煙の流れや体温などが変化していることを感じられ、命のファンファーレを心の中に聴いた。動画を観るだけでも自分の中に、生きる何かが湧いてくる。



生まれた椅子 ー 知識の椅子

金城琉斗 キンジョウリュウト

 

人間の生まれ持ったさまざまな環境を、さまざまな椅子で表した作品群。作家は、身近にある段ボールを使うことで、鑑賞者にものづくりに親しみを持ってもらいたいと述べた。今回、展示された小鹿の作品には「知識の椅子」というサブタイトルが与えられた。知識の源泉である本。入院や待合室の付き添いのとき、体調が回復しつつあるとき、読む本は回復後の患者や家族に新しい生活と深くかかわる。そんなことも示唆してくれる。